名刺は切らしておりまして

何かの拍子に目にしてしまった。「名刺は切らしておりまして」

プログラマ(それも日本の)にだけピンと来る言葉だ。

日本のシステム開発は、多重下請け構造だ。お客が発注したシステムを受注した会社がA社とする。A社がB社に発注し、B社がC社に発注したとする。私はC社のプログラマだ。

私はB社に行って、仕事の説明を受ける。開発現場は、A社のオフィスだ。B社は私に言う。「あなたはB社の社員ということにしてください」

開発現場のA社のオフィスに行く。担当者と名刺交換する。「初めまして、A社の山田です」「初めまして、B社の阿部です。すいません、名刺はきらしておりまして」

ここでA社の山田さんは、では、あとで名刺をください、とは絶対言わない。視線を微妙に外し、「ああ、そうですか」と軽く受け流す。彼は(表向き)多重発注の事実を知らない(事になっている)のだ。私も余計な事は言わない。お互い触れてはいけない事は言葉に出さずに仕事さえすればいいのだ。

システムは無事カットオーバーする。しかし、トラブルが発生する。私は客先へ行くことになる。データセンターでユーザー企業のシステム部員と顔あわせしてまたこう言うのだ。「初めまして、A社の阿部です。すいません、名刺はきらしておりまして」

P.S. 下請けに仕事を出すこと自体はどの産業でも広くおこなわれているが、社名を隠蔽するのはIT業界特有の慣習だろう。客はどんな会社がシステムを作ってるかわからないわけだから、ライバル企業のシステム再構築プロジェクトに息のかかった下請けを潜り込ませる、というような行為は割と簡単にできるような気がする。

ウイニー

なんと、1年でウイニーの利用者が3倍になったそうだ。

ファイル交換ソフト:ウィニー利用、3倍 ウイルス遭遇は44%--1年前と比較 – 毎日jp(毎日新聞)

「現在利用者は、ウィニーの被害が社会問題化した一昨年6月の調査で3・5%だったのが、9・6%に急増していた。ACCSは「明確な増加原因は不明」とするが、「著作権侵害行為も激増していることが推定される」という。」だそうだ。ほお、これは大変な事態だ、といきたいところだが、もう少し注意深く見てみよう。

この記事は「毎日新聞」の記事で、調査は「ACCS」によるものだ、という事を頭に入れておいてほしい。

もう一つの調査結果がある。ウイニー関連で定評のあるネットエージェント社の調査結果だ。

Winny経由情報流出調査サービス Winnyノード数推移

こちらの調査では、ネットワーク上で稼働しているウイニーのノード数は2006年度に比較して2007年度はやや減少の傾向にあるそうだ。稼働ノード数が減少しているのにユーザー数が3倍に拡大している????

このへんのからくりは、以下のブログで推定されているが、私もこれが正解だと思う。

ファイル交換ソフトの利用者は急増しているのか? – 監査とセキュリティのあいだ

つまり、ACCSの調査は2006年と2007年では「調査方法」も変わっているし「ユーザー数」の定義も変わっている。つまり統計としてはまったく別物でそもそも数字を比較する意味がないという事らしい。ACCSもそれくらい理解していると思われるが、それでも敢えて「ユーザー数が3倍に拡大した」という発表をしたのはなぜか。

おそらく、現在議論されている「ダウンロード違法化」について世論誘導したいという思惑でACCSと毎日が手を組んだのではないか。悪質な政治的プロパガンダと言うべきだろう。

introセッション(高田馬場)

新年になったのでイントロにセッションに行ってきた。6時頃行くと、半分くらいはいつもの面々だった。イントロ鉄壁のリズム隊(宮部さん、村山さん、山岸さん)もいる。常連の皆さんに「やせたね」と言われる。そうですかね?今日はイケメンチェロ奏者、おじさんバイオリン奏者、木琴の女性、コルトレーンのようにクラリネットを吹く男性などクラシック畑からのチャレンジャーが多い日だった。私の新年の一曲目は、井上さん(as)の参加でFのブルース。ピアノの人は10年ほど前に池袋の「adagio」という所で共演した人だった。お久しぶりですね。今日非常に感銘を受けた演奏は、3管の演奏で「Confirmation」だった。テナー、クラリネット、トランペット、ドラム、ピアノ、ベース全員が皆非常にレベルが高い上に直球勝負で、まさにバップの王道というべき演奏だった。普段不真面目な演奏をしている私の演奏が恥ずかしくなるほどだった。特にクラリネットの演奏は私が今まで生で見たジャズクラリネットで文句なく最高の演奏だった。私自身は他に"Bye Bye Blackbird"と"Stella By Starlight"を演奏して9時過ぎに帰る。

帰りに新宿の知音に寄って油条と腐竹を買って帰る。